サイト改築の影響で推薦図書ページが現在閲覧できない状態であるためこちらの投稿で紹介します。

和書

日本語で読める催眠関連まともな書籍は私の知る範囲では2冊です。うち1冊はちょっと学術的と言いますか、内容的に実践的ではないので推薦図書には入れていません。

また、ここで紹介するのはその2冊ではなく、まともな1冊+α的なものになります。

はじめての催眠術

催眠誘導をしたことがあるかどうかに関わらず最低限読んでおいた方が良いレベルで情報がまとまっています。もし、この書籍を読んで知らない情報が少しでもあれば不勉強だと言えます。

逆に入門書としてはこの上ない内容になっているので、これから催眠誘導をやってみたいと思う方がいたらやはりまずはこの本を手にとってみるのをオススメします。

これを読んでからこの後紹介する本を読むか、当サイトのサブスクリプション "note"で出している幾つかの記事を読むと良い感じにステップアップが出来るはずです(露骨な宣伝)

催眠誘導ハンドブック

『はじめての催眠術』で誘導方法のバリエーションに物足りないと感じた人はこれを見るのをオススメします。

原著はアメリカの中古市場に於いて30万前後で取引されることもある稀少本ですが、日本語版は普通に入手できます。(私は新宿の紀伊國屋書店で購入しました)

また、翻訳者による細かい注釈があるため原著より親切なのもポイントです。

心得的なものや訓練方法などが紹介されているので、より本格的にやりたい人向けの内容になっています。

ただ…内容的にはちょっと高度と言いますか、ある程度催眠誘導の経験がある人で無いと分かり難い内容が含まれているため、入門書と言うよりは初学者向けの本になります。それと、著者がエリクソン派であるため、トランスというちょっと微妙な概念の単語が頻出します。

ダレン・ブラウンなどがやっている握手からの誘導法などもこちらで解説されていますが、やはり経験者じゃないと難しく感じると思います。

理論はちょっとあれですが、様々な誘導方法を知りたい人にオススメ(同じことを2回言ってる気が…)

イゴール・レドチャウスキー (著), 大谷彰 (翻訳)

日本語で読めてある程度おすすめできる催眠関連本はこの2冊くらいです(『催眠誘導ハンドブック』は手法集的な意味でのおすすめで、催眠を学ぶという点ではそこまで推せません。あくまでも補助的な立ち位置です)

有用なので他の本だと『現代催眠原論』が挙げられますが、内容的に専門性が高い上に読んだからと言って誘導が上手くなるかは何とも言えません。最初に述べたまともな2冊の内の1冊がこれになります。

そもそも『催眠誘導ハンドブック』の翻訳者がこの『現代催眠原論』の著者の1人ですし、その注釈が入っている上にコスパを考えると無理して買うまでも無いかなと思います。

で、このタイトルの上がった2冊(3冊)以外は内容的にそこまで参考になりません。というか、理論が間違っていたり古いケースが目立ちますし、むしろ読むことで悪影響がある可能性が考えられます。

また、エリクソン関連の書籍もコスパが悪いので、よほど興味のある方以外にはおすすめできません。エリクソンは臨床記録を正確に取っておらず、後から書いているため正確性に欠けるという指摘もありますし、書かれている内容の全てが事実かどうかも定かではないため、やはり興味の...ry

更に言うなら、エリクソンがレポートを出し始めてから20~30年後にエリクソンの研究方法の問題点が指摘されたレポートが出てきています。内容としては対照群の設定が悪いとか、母数が少なすぎるとか、全体でどれだけの人数に対して行われたかが定かではないとか、ざっくり言うと科学論文としては粗末すぎるみたいなツッコミがあります。また、同様の実験を規模を大きくしたところ再現性があまり無かったなんてことも言われているため、エリクソンの催眠について深く知る必要はまったくないというのが個人的な見解です。

それを踏まえた上でどうしてもエリクソンの催眠について知りたい方は、2016年頃から出ているシリーズを読むのが良いと思います。翻訳は少しあれですが、エリクソン本人の話が出ていますし、編集も近しい人たちでされているため、後年の弟子みたいな人が書いたやつよりもオリジナルに近い情報が得られます。

なお、上で述べた『催眠誘導ハンドブック』の著者はエリクソン催眠とNLPを勉強している人なので、基本的なことだけであればやはりその1冊で足ります。

いずれにせよ、『はじめての催眠術』と『催眠誘導ハンドブック』があれば実践する上で必要な知識や技術が身につきます。それ以上の効率化を目指したい方はやはり当サイトのサブスクリプションに登録して "note" の内容を読むのをオススメします(ダイマ再び)

洋書

日本語以外で良いのであれば次の2冊がスタンダードになります。

The Oxford Handbook of Hypnosis:

既に情報的には古い感じもしますが、『現代催眠原論』の上位互換版のような内容になっています。また、『はじめての催眠術』の参考資料一覧にもこの書籍が入っています。

ただ、割としっかりした学術書なので読むのが少し大変です。

実践する上で役に立つポイントが書かれているというよりは、過去の研究で何が行われ、実験結果からどういう仮説が立てられているか、何が否定されているか…等とアカデミックな話がメインになります。また、後半1/3は催眠療法に関する話がメインになりますし、日本では医師以外は治療行為としての催眠誘導ができないため、ほとんどの人には無用な話になります。

The New Encyclopedia of Stage Hypnotism

ステージ催眠のバイブルと呼ばれる書籍です。

海外のマジックフォーラムで「ダレン・ブラウンみたいなことをしたいんだけど…」みたいな書き込みに対して、この書籍が挙げられることがあったりなかったり…

理論的には古いですが、ステージ特有の手法などが網羅されている正にEncyclopedia(事典)ですね…

実践という意味ではこちらの方が得るものは多いかも知れません。ただ、重ねて言いますが、理論は古いです。

番外編

DVDなので番外編に入れています!

SKIN - Benjamin Earl

暗示を使ったアウトつきの現象ですね。あるレビューでは「高度な催眠」と書かれていますが、サブスケール的に硬直よりも起こりやすい現象であるため、カタレプシーを一生懸命やろうとするよりはこのスキンのルーティンをやったほうが圧倒的に簡単です。

いきなりこれを見て挫折した人でも、上で紹介した本の知識があればきっとできます…

SKULDUGGUREY - Luke Jermay

SKINと似たような現象も含まれています。補足資料を見れば分かりますが、Benjamin Earl と Luke Jermay は情報を共有しているようなので納得の内容です。

これまたやはり硬直よりも起こりやすい現象で構成されているため、カタレプシーが初歩であるという間違った固定観念さえ打ち破ればそう難しくはありません。

Induction by Spidey

メンタリスト兼マジシャン兼催眠術師の Spidey によるステージ催眠のレクチャー DVD です( DL 版もあります)。日本語字幕版はありません…

誘導方法自体は古典的で理論もちょっとあれですが、ステージ催眠のルーティンを知りたい人には良いと思います。実際のショーの映像があるため参考に… なるかと思いきや、あの規模のステージショーができないとそこまで役に立たないのでは?と思わなくもありません…

個人的に嫌いなスタイルなので、あまり高く評価はしませんが、参考資料としてはありです。

The Manchurian Approach

これもマジシャン向けですね。『アウフヘーベン』にも名前が挙がっていたので聞き覚えのある方も居るんじゃないかと…

私が 2017 年に出した催眠レクチャーでもここで紹介されていた誘導方法の一部(とアレンジ)が実演されていますし、割と参考にしていた形跡があります。

ただ全体的にステージ催眠ベースであるため、理論が…(ry

※ステージ催眠のほとんどはメスメリズム由来であり、理論体系がアレと言いますか…そもそも催眠とは別物だと考えられることもあります。

これまた日本語字幕版が存在しないため、やる気のある人向けですね。それと、画質があまりよろしくないのと内容が長く大体退屈なのが欠点です。

書きながら思い出しましたが、私これ最後まで見てませんね…途中で寝てました…(ぉぃ)

最後に

そもそも催眠って必要?という疑問については note の記事を御覧ください(ダイマ三度)

結論から言うと、催眠誘導の優位性は「催眠に掛かった」という証言を引き出しやすくなるだけで、効果そのものは他の手法と同程度かそれ以下であるため、下位互換に近い立ち位置となります。むしろ「催眠」という言葉に対して怪しさを感じる人には催眠誘導という文脈だと効率が落ちてしまいますし、特別に催眠を見たい経験したいって人を相手にする時以外は他の手法を使った方が良いと個人的には考えています。