神戸の催眠奇術師を名乗る Birdie さんの新作レクチャー "MRI TASTE" の感想です。

なんか1日で250本売れたそうですね?

追加で少量入荷されるそうなので気になる人は確認してみてください。

MIKAN KU HENKA

みかんの味が変わる現象。

堅い説明をするなら…

RHI 等と同じ予測モデルを利用した一般的な(錯覚 or 幻覚)現象にトリックを併用し、フィードバックと事前予測に誤差を強く生じさせることで催眠現象を起こす、所謂トリック併用型の催眠誘導。

ってところです(分かりにくい)

トリックがなくてもバイアス(或いは肯定的検証方略とも)によって起こりますし、特に記憶と強く結びついている感覚を利用した効率的な手法だと言えます。

トリック部分に関しては、みかんを準備するという手間さえ考えなければよくできています。

味覚を変化させるトリックは4種類あると以前にTweetしていますが、MIKAN KU HENKA もここにカテゴライズされるものでした。

MIKAN KU HENKA で使われるトリックは気が付かない人は一生気が付かないタイプのものなので、それを知るためだけに購入するのはありですね。ちょっと気になる点もありますが、そちらは後述にて。

導入からの接続:

高度な催眠現象を起こす際のスクリーニングとして、みかんの現象を使う話。

続く現象が起こる原理は以下の投稿と同じですね(どちらも会員向け)。特に2つ目の退行催眠で紹介している手順が似ているんじゃないかと思います。

ほとんどすべての催眠現象は1つ目のモデルで説明がつくので、後はそれに沿ったアプローチができるかどうか、より効率的な手法が思いつけるかどうかと言えます。

少なくとも、この MIKAN KU HENKA はその効率的な手法にカウントして良いんじゃないかと思いました。

気になる点:

  • ファクト
  • 素手で触ること

原理に関わるので何がどうなっているか書きませんが、ファクトが気になりました。

気になったので調べてみた所、短時間で起こる説と、数時間は起こらない説が両方あるそうで… どっちなんですかね?

前者ならトリックとして正常に機能しますが、後者の場合だと演者がそう思い込んでいることで実際に効果が発揮される催眠あるある現象になるので非常に気になるところです。

ネットで調べた限り前者についての言及が多いのですが、似たような投稿(リライトか?)ばかりで、どれにもソースが無いんですよね…

ただ、後者は書いている人が大学で研究している個人っぽいので、もしかすると…って可能性があります。

ファクト的に間違っている場合このレクチャーの手法が根底から覆される問題がありますし、もしファクトがあるなら提示して欲しいところです。

都合上演者がみかんを素手で触る点も気になりますが、手袋をするなどで解決されるのでこちらは些細な問題です。

ファクトがなかったとして:

説明されている現象にファクトが存在しなかったとしても同現象は起こるんじゃないかと考えています。というか、起こる理由を別に説明できます。

もし仮に別の説明が正解だった場合、演者がみかんに触れる必要がないため衛生面を気にしなくて良いですし、レクチャーの方法よりも簡単に現象を起こせるようになる可能性があります。

この辺はちょっと検証してみたいです。

追記:

結構ちゃんと調べたところ、割と厳密な実験を見つけました。それによると「手法問わず最低1時間は変化しない」ことがほぼく確定しているため、この現象はトリックではなく純粋な暗示による現象であると言えます。つまり100%はあり得ないのでショップの宣伝は誇大広告ですね…

味覚について:

元々曖昧な感覚で、目を閉じたり、鼻を摘んだりするだけで変化する感覚であり、記憶に強く結びついているため、催眠によって味覚の変化を起こすのは実はかなり簡単だったりします。

(味覚は触覚・痛覚、イオンチャンネル、レセプターによって起こる複合的な感覚であるため、様々な影響を受けやすい)

特にトリックを併用すれば高い確率で催眠を体験できるはずなので、疑い深い人相手にも使いやすい点にも同意します。

MRI tuning UNFAIR

MRI tuning を持っていなので、比較はできません\(^o^)/

David Humphrey の "Jazz Mentalism" をレギュラーで即興で演じられるようにしています。人によってはコペルニクス的転回のような印象を受けるかも?

"Jazz Mentalism" は ESPカードの傑作と言われ、ESPカードの現象を考える際にこれを超えるものは作れないし、これに迫るものを作りたい的なことを Micheal Murray が言うくらいなので、受けるのは間違いありません。

気になる点は、アウトも完全に "Jazz Mentalism" まんまなんですけど、クレジットは特に無かったことくらいですかね?

※ Micheal Murray が「オレは David Humphrey に許可取ってるぜ」と態々言うレベルで、無許可或いはクレジット無しで解説されまくっている現象ですし、最近クレジット云々がうるさい中でよくやったな…と思いました。

ちなみに、裏向きで行うことのメリットは、最近こちらで販売している "Φ[fai]" でも言及しているので気になる方はチェックしてください(ダイマ)

まとめ

みかんを用意するのが面倒ではない人は向いていると思います。

そして、前回の "D4S" と言いオマケのほうがクオリティ高いのでは?って感じがします。

"D4S" は「ずるい、アンフェアどころか超王道」という評価をしていましたが、今回の "MRI TASTE" はちゃんとズルくて効率的な手法が使われています。むしろ、今回のレクチャーにこそ「アンフェア」のタイトルを付けるべきですね!(適当)

古典催眠しか知らな人からしたら効率的に映るかも知れませんが、現代催眠理論をかじっている人からしたら普通と良いますか、標準的なアプローチだと感じると思います。(現代催眠では"被暗示性"とか"深い催眠状態"の様な言い方はせず、もっと別の現実により即した説明がされますし?)

追記:会員向け

上述の通り、原理について幾つか調べましたが、紹介されている方法をやったとしても最低1時間は変化が無いのがほぼ確定です。

詳しく実験している方がいたので、レポートを貼っておきます。

つまり、MRI TASTE は疑似催眠ではなく純催眠だったという落ちになりますね!\(^o^)/

100%成功はありえないですし、成功率も普通の認知・知覚系の起こる割合と差がないと考えられます。逆に言えば、物理的な変化を伴わずに、100%と言ってしまえるほどの確実性が出ていることになるわけですが、これは催眠誘導において如何に態度が重要であるかを示しています。

個人的にこの系統の技術は [マインドセット>>テクニック] だと考えていますし、これもその1例と言えます。