そういえば、読んだレクチャーでまだレビューを書いていないのがあったなぁ…と引っ張り出してきたのがこいつです。

旧ブログでもレビューを書いていないはずなので、初出しですね。

THE ESSENTIAL : kitaharayoshito

タイトルの前にPOSTSTANTIAL MEANTALISMとついていますが、"POSTSTANTIAL"ってなんでしょう?

それは置いといてチャキチャキっとレビューをしてしまいましょう。

北原禎人という方のレクチャーノートです、この方は他にも幾つかレクチャーノートや本、DVDを出していますが、頑なに姿を見せないイメージがあります。(DVD以外は絶版っぽいですね…)

私もこの方の実演は見たことがないので、無声のDVD映像(スライハンド)や文章からでしか人物像を想像できませんし、かなり間違ったイメージがあるかもしれません。(敢えてそうするのが目的かもしれませんが)

文章が読みにくいという話もありますが、恐らくはこの方、情報工学や哲学にかなり傾倒していたのか、やたらとそっち系の横文字が多いです。後は社会学でよく出てくる単語ですね。

調べないと分からない単語もちょいちょいあったり…

書いてある事自体は割りと面白く読めました。私もそう思っていることが多々ありましたし、現状のある問題についても結構バッサリ切り捨てるような言動もあります。

どちらかというと思想書に近い印象。

思想部分の感想を書くのは少し骨が折れそうなので、解説されていたルーティンのみのレビューとなります(ここまでのは一体何だったんだ?)

Vibgyor:

最初タイトルを見て「なにこれ?」と思いましたが、現象を読んで分かりました。虹の色の頭文字を順番に並べた単語です(解説にも書いてありました)。

現象はザックリいうと2人の観客がそれぞれ絵の具を選び、2人の観客が選んだ絵の具を混ぜた色が予言されていたというモノです。

原理的には古典...に入るとは思いますが、私は出展を知りません(^ρ^)

カード・マジックでは似たような原理をちょいちょい見たことがあります。原理は非常にシンプルなものの、その状況を違和感なく作り出すための立ち回りが必要になります。

著者はこの現象をすることで「虹を出せる男がいる」と言われたそうです。

ちょっと中二っぽくて良いですね…

構造的には単純ですし、他のオブジェクトでもできそうなので良い刺激になりました。まぁ、これ読んで年単位の時間が立っていますが、類似の現象をやったことはありません(^ρ^)

Bohemia Shapho

注意書きに”このトリックは予言ではなく「転写or具現」です。解説を読んで何故「or」なのかと演技の仕方を想像していって下さい。”とあります。

手法は所謂フォースです。

マジシャンズ・チョイス、エキボック、サイコロジカルフォースのどれを選んでも良いのですが、その後の戦略が少し独特だなと思いました。

それもまたある種のフォースになっていて、私とは全く違う方法でしています。

ノンヴァーバルをメインにしてた私としては、この言語的な解決は非常に参考になりました。

最初の注意書き通り、日本の硬貨でやるので選択肢が確率でも当たる程度ですし、予言としてはやらないほうが良いと感じます。

一時期、予言ではありませんがコインや小さいボールを左右どちらかの手に握らせて、入っている方の手を当てるというのが少し流行っていた時に、あれも確率的には1/2なので、もう少し上手い見せ方をすれば良いのに…と思う人がかなり多かった事を思い出しました。スワミギミックで二桁の数字を当てるだけの人と同じで、思考停止してる印象がありますしね…

Glansnost

すごく有名なマジックの演出についての解説がメインです。

原案の見せ方では1人相手にやるところを、5人くらいを巻き込んで見せる方法についてです。

原案はマジシャンが選ぶ名作に選ばれるくらい有名なものですが、手順がワンパターンになりがちな部分を修正して、よりメンタリズムらしい使い方にしたというのが感覚的に近いです。

Kagebara

ブックテストで使うテクニックについて。

ルーク・ジャーメイがMaking Mind Reading Look Real で解説していた方法に似ています。(もしかしたら別のレクチャーだったかもしれません)

Surfish

前後の作品と比べると非常にカジュアルな現象です。

タバコの箱を使うのですが、デックの箱でも出来るはずです。(私は非喫煙者)

ただ、デックのケースよりはタバコの箱のほうが雰囲気には合っています。

カジュアルな場で突然デックを出すよりはタバコを出したほうが自然なのは想像に難くありません。

Congram

写真を使った予言現象。

何処かで見たことのあるような原理です(^ρ^)

これもどちらかと言うと古典で、カード・マジックでも見かけるものですね。

このレクチャーノートの中で一番やってみたい現象でもあります。写真を用意するのがやや面倒ですが、その手間を掛けるだけの価値はあるように思います。

 

現象の部分では、原理は古典的ながらも演出や現象に至るまでのプロセスが割りと好みでしたが、全体を通して思ったのは、著者の解説や伝えようとしていることはどれもアタリマエのこと、考えてさえいれば辿り着けるはず、ということです。むしろこれを当たり前だと感じない人、思考停止している人が一定数いる現状の方がヤバイのだと思います。

既に絶版なので、今手元にない人は読む機会が無いかと思いますが、無理して入手するほどのものでは無いというのが正直な感想です。

理由は、合う合わないが激しく、人によっては読んで嫌な気持ちになる可能性もあるからです。

少なくともスライハンド至上主義の人には合いませんし、メンタル系の人でもギミックや原理に頼り切る人には合いません。

メンタリズムブームによって生まれた量産型メンタリストや、知識も技術も不足しているのに金が取れてしまっているマジシャンに対して批判的な内容が含まれているので、何となくでメンタリストやプロを名乗っている人にも合いません。

逆に言うと真っ当にマジックが好きな人には合うかもしれませんが、真っ当に好きな人は原理が古典で割りとよくあるやつなので満足出来ない可能性が大いにあります。

それでも読んでみようと思う方には良いかと思います。(ショップによっては少しだけストックがあったりするのでまだ入手出来る可能性はあります)