タイトルの通り500円玉とハーフダラーどちらを使うべきかという論争から日用品マジックについての話。

コインマジックは日用品マジックなのか?

私の意見としては「日本だから日本円を使うべき」、という意見に全く正当性を感じることが出来ません。

「500円玉は日常的によく使う硬貨(日用品)だから親しみやすい」、この意見がそもそも間違っていると考えています。

ハーフダラーはアメリカでも珍しい

ハーフダラーは確かにアメリカの硬貨ですが、流通量が少なくアメリカ人でも持っている人のほうが少ないくらいです(1家に1枚あるかどうからしい)。

以前ハーフダラーを使った手遊びをしていたら、知人のアメリカ人に「それハーフダラー?初めてみた」と言われたこともあります。

そういうわけで、「日用品だから500円玉を使うべき」という意見は全面的に却下出来ます。

500円玉は日用品ですが、ハーフダラーは日用品ではありませんし、この2つを比べる時点で問題の設定が間違われています。

バイシクルが日用品の世界

日常的に手に入る500円玉を使うべきだと主張する人がカードマジックをする時はBICYCLEを使っているのであれば、それは矛盾では無いでしょうか?

アメリカのマジシャンがBICYCLEを使う理由は、それが最も手に入りやすいカードだからです。スーパーマケットに置いてあるカードが大体BICYCLEで、日本で言うなら100円ショップのトランプ的な感覚なはずなんですよ…

酒場や家に行ってもその辺に置いてあったりとUSPCのカードは日用品と言っても過言ではありません。

外国人である母の実家に行った時はBeeが置いてありましたし、海外の知人宅にはリビングにBICYCLEが置いてある率が結構高いです。

日用品を使うべきと掲げる人は、カードも100円ショップのを使うべきでは無いでしょうか?(日本でカードが日用品なのか?という話は脇に置きます)

  • ハーフダラーはアメリカでは非日用品。
  • BICYCLEはアメリカでは日用品。

アメリカ等ではコインマジックは非日常であり、カードマジックは日常と言えるのでは無いでしょうか?

海外では非マジシャンでもカードの扱いに慣れている?

欧米圏(+アジアの一部地域)でカードは子供から大人まで日常的に使われるものです。カードをシャッフルできない人は少ないですし、取扱に慣れている人も多い印象があります。

その辺でカードゲームをしている人を見ても空中でリフルシャッフルをしていたりするのを度々見かけます。
(外国人である母もカードゲームをする際、普通に空中リフルシャッフルをやりますし、なんなら私より上手いです…)

しかし日本ではそこまで一般的ではありません。よく使っていると言っても高校生くらいまでで大人になればほぼ使わない人もいます。

このことから、カードマジックに対する驚きに日本と海外で差が出るのは当然と言えば当然だと思われます。

日用品/非日用品から考える捉え方の差

日本でも日用品であるスプーンを曲げるマジックはかなりウケることから、海外ではカードマジックも同じ様なウケ方をするんじゃないかと考えています。(個人的な経験で言うと、海外はマジック全般、何をやっても日本より良いリアクションが帰ってくるので比較しにくいのですが…)

日本では500円玉は日用品、カードは非日用品であるため、海外のマジック事情、特に観客からの印象が真逆になっている可能性があります。

この事を深く考えずに、海外のマジシャンのネタをそのまま持ってきても観客と上手くハマらないのは当然なわけで… まずは使う素材を性質として抽象化し、よく吟味してから具体化しなければ海外マジシャンのレクチャーや思想は日本では全く使えないんじゃないかと…

何も考えずに単にコピーする人もいますが、私はそのやり方に対してやや反対です(完全に否定しないのは、模倣は上達する過程で必要なことだから)

その素材が選ばれた理由や背景を何も考えずにコピーすることに対して否定的です。

非日用品を扱うのであれば、多少ハンドリングが独特でも恐らく気にならないかと思いますし、日用品であれば本来の使い方や持ち方があるので違和感のある動きは非常に気になるはずです。海外のマジシャンを見ていると、ハーフダラーを使ってマジックをする時と一般的な硬貨を使うときではハンドリングが違っているはずです。これは恐らく非日用品と日用品で必要な演出が異なるかためだと思われます。

その辺を考えずに500円玉でコインマジックの技法をそのまま当てはめるのは些か考えが足りていない気がしてなりません。

ピンセットを使ったマジック

最近少し流行ったピンセットからコインを取り出すというマジックもそれに当てはまるかと思います。

ピンセットという日用品からコインを取り出す意欲的な現象です。しかし、中途半端な模倣者はまずピンセットの持ち方から和感が恐ろしく出ています。原案者ですら普通の持ち方に寄せたり、前後で普通の持ち方をしていて自然さを出すための工夫を感じられるのに、劣化コピーは初めからコインを保持することありきな持ち方をしているのです。

例えば、箸の先端からコインが現れるという架空の現象を想像してみてください。箸は日用品なので日本人であれば出来る出来ないは別として正しい持ち方を知っています。しかしマジックでコインを出す時だけ正常とは言えない持ち方をしていたらどう思うでしょうか?

持ち方に秘密があると言われても仕方が無いと私は思います。

まとめ

マジックそのものが非日常を演出するものですし、道具やその持ち方が非日常的であっても特に違和感を感じない可能性は充分にあります。

日用品を取り扱うのであれば最低限持ち方や用途はある程度本来のモノに寄せるべきだと私は考えていますし、非日常的に使うものであれば多少違和感のある取り扱い方をしても問題ないとも考えています。

日本では500円玉を使った場合、それは日用品を扱ったものにカテゴライズされますが、海外コインマジシャンの動作のほとんどは日常でやらない動きであるため、違和感が強くなる気がします。

そこから、コインマジックをするなら逆に日本円は使わないほうが良いのではないか?という結論に至りました。