先月のマジックマーケットで購入したD4Sの感想です。

ちなみに、マジケでは2枚で〇〇〇〇円で販売されていたので、知人と一緒に1枚ずつ買いました(゚∀゚)

D4S アンフェア

神戸の催眠奇術師Birdieさんによる催眠術+αのレクチャーDVD。

「出会って4秒で催眠」を略してD4Sだそうです。ニコンのカメラではありません(一部の人にしか伝わらない)

D4S

今回のメインになる催眠のアイディア的なルーティン的なサムシング。

ハンドシェイク・インダクションという呼び方がされていますが、ダレン・ブラウンなどがやる「握手による誘導」ではなく「握手からの誘導」ってのが正確な表現です。つまり、インダクション・フロム・ハンドシェイクってことです。

実際に4秒で誘導できるわけではありませんが、出会って4秒から催眠誘導のルーティンに入ることはできます。そこから誘導できるまで最短で30秒くらいですかね?(D4Sの手順はやったことがありませんが、似たような手法で最短30秒弱くらいで掛けることができるので恐らくこれくらいかと)

原理についての解説はあまりなく、実際のルーティンを例にやり方を説明していく感じになっています。解説では古典的な用語で説明されているものの、やってることに関しては現代的アプローチの標準的な手法だと言えいます。

もっと「ずるい」方法を期待していましたが、全くアンフェさがなく超王道だったので、私としてはちょっと肩透かし感がありました(゚∀゚)

逆に言うと、催眠術をあまり知らない人や初心者は確実に見た方が良いと言えるくらいの内容です。THE標準。

誘導方法で悩んでいる人は一見の価値はあると思います。

ヒプノティズム・ベンド・アンフェア

D4Sの後に続けるルーティンの1つ。詳しく話すとネタバレになるので省略します。

スプーンを折る際に、指を切ってしまう可能性があるという話はその予防方法も含めて興味深かったです。

MRIペンデュラム・アンフェア

MRIペンデュラムを持ってないので元のルーティンを知らず、これがオリジナルのルーティンだと思ってました\(^o^)/

というか、本人から聞いたルーティンがこれなんですよね…逆にMRIペンデュラムのオリジナルルーティンでは何をしているのか気になってきました(笑)

そして、今回のレクチャー『D4S アンフェア』で最も価値があるのは、この解説なんじゃあ無いかと…これとボーナスで解説されている内容だけでレクチャー1本作れますよ…

ちなみに、ボーナスについては面倒なのでここで書きません。これもずるいと言うよりは王道的な手法だなと思いました(小並感)

問題点

問題点を挙げるとすると、D4Sに関して原理的な説明がまず少ないこと。既に述べたように、これ現代理論で全部ちゃんと説明できるんですよね…まぁ、ターゲット的に需要がなさそうですし、大きな問題ではありません。

最大の問題点は、解き方の説明が無いことです。

催眠術は時間経過で自然に解けるので厳密には催眠を解く必要は全くありませんが、一応ポーズとして解除をした方が良いという説明はしておいた方が良かったかも知れません。それか時間経過で解けるという説明をすべきとか。

極稀に催眠状態は術者が解除しないかぎり継続すると思い込んでいる人がいますし、そういった人たちは例えポーズだとしても解除したことを示さないと、1日中どころか数日掛かった感じがする、気怠さを感じると訴える人がいます。

レクチャーは腕が固まるまでの解説と、他は掛からなかった場合のアウトについての話がメインで、掛かった場合の事が想定されていません。レクチャー中ではヒプノティズム・ベンド・シリーズの紹介がされているので、催眠の詳しいルーティンはそちらを参照するようになっているのですが… これしか見ない人もいるわけで…ry

まぁ、これに手を出す人は催眠に対する最低限の知識はあると思うので、そこまで問題にならない可能性も充分にあります。D4Sを見ただけで「さぁ!催眠をやるぞぉ!」ってなる人はちょっと危ういかも知れません。

催眠術は言われているほど安全ではありませんし、少ないとは言え事故もあります。副作用として精神障害が起こる可能性もあるので、催眠術に手を出すなら、掛ける相手の選別や事故を減らす努力、何より万が一の場合に責任を取る覚悟が必要になります。
(この辺の感覚が欠如している催眠術師が多いように感じますね… 私の周りだけかも知れませんが、催眠の定義すら言えない人が普通に催眠をやっているケースを多々見かけるくらいです)

総評

「アンフェアどころか超王道」

催眠術の古典的アプローチしか知らない人には非常に良い教材なのは間違いありません。問題点は幾つかあるものの、レクチャーとしては充分な内容だと思います。

D4Sと同様の方法論で他の暗示誘導も行うことができます。解説では具体的に語られていませんが、2つの現代的な考え方がされていますし、これは私が普段催眠術をやる時に常に意識しているポイントでもあります(会員向けの関連記事があります)。

なお…評価の大部分はMRIペンデュラム・アンフェアによるものです。これは非常に構造的に上手くできていると思いますし、すでに述べていますが、これ1つだけでも充分レクチャーとして成立するレベルです。

トータルの印象ではアンフェアな感じは無く、正統派とか王道と言った方が近いんじゃないかなと思いました。
※どの辺が「ずるい原理を多用」されていたのか分からなかったので、個人的な評価だと★2.5(5段階評価)くらいですね…

これをアンフェアと称し、周りも「ずるい」と評価してしまうくらいに催眠関連の知識が広まっていないとも言えます。

おまけ

催眠はプラセボとは違う

Birdieさんは著書や言動から察するに催眠誘導を「思い込みを操る」、つまりプラセボ効果の一種だと考えているようですが、これここ数年の論文で否定されているんですよねぇ…

会員向けですが、次の記事でそれについてソースを交えて言及しているので、気になる方は参照してください

なので、彼の説明は一部的外れだったりしますし、催眠を上達させたいと思う人は気をつけたほうが良いんじゃないかと思います…

ただ、掛け方そのものは現代理論で説明ができるほど標準的と言いますか、効率化されたものなので誘導手順だけを参考にする分には問題はありません。

むしろ、ここまで現代的な手法を使っているのにも関わらず、未だに古典的な考えを引きずっているのが不思議でなりません。

催眠は理論が間違っていても、ラポールや被験者個人の要素などから成立はすることがあります。ただ、間違った理論で成立する時は、属人性が高く、再現性が低い場合が多々あるため、真似しても上手く行かなかったり、上達しにくかったりと問題があります

少なくとも基本的な知識を入れてから、具体的な手法を見ることをおすすめします。

ハンドシェイク・インダクション

D4Sは「握手からの誘導」であって「握手による誘導(=ハンドシェイク・インダクション)」ではありませんと既に書きました。

一般的に言われる、ハンドシェイク・インダクションを知りたい方は『催眠誘導ハンドブック』にエリクソンの方法とと、ダレン・ブラウンがTV番組でやっているようなやり方が紹介されています。(『催眠誘導ハンドブック』も理論が古いので、練習法と誘導方法以外はあまり参考になりませんが…)

イゴール・レドチャウスキー (著), 大谷彰 (翻訳)