今回はジャーメイズ・マインドの最終巻である、第3巻のレビューのようなものです。

ジャーメイズ・マインド

1巻の感想の時に、第3巻は対マジシャン向けのルーティンが多い的な事を書きました。更に言うと、この巻が最も「ジャーメイズ・マインド」というタイトルに相応しい内容となっています。

正にルーク・ジャーメイの考え方などを知ることが出来ます。

セリフの一部を書き出すとこうなります。

マジックの理解を深めるほど基本的なタネに新しい可能性を見出して発展させられるはず。しかし現実は知識が増えるほど突飛な”新商品”に飛びついてしまう。素晴らしいマジックになる古い原理を忘れていく

 

まず観客がバカではないから

スポンジのうさぎを手の中で繁殖させたと思ったら、観客の選択を操作し予言をする。未来が見えるならウケないスポンジなどしないはず

メンタリズムとメンタルマジックの違いについても語られています。メンタルマジックが持つ特有の問題や、矛盾などは確かにと共感しました。

この巻を見ていて思ったのは、私はかなりルーク・ジャーメイの考え方に寄っているので、マジシャンというよりはメンタリストと名乗るべきなのかもしれないってことですね(笑) まぁ、ジャーメイ本人は別にメンタリストを名乗っていませんが…

元々ジャーメイの影響が強かったのに更に強くなりました\(^o^)/

ルーティンについて

今回は一つ一つのルーティンに対しての感想は書きません。

というか、どうしてもタネに触れることになってしまいますし、非常に書きにくいというのが実情です。

ただ、上の引用にもあるように、”マジックの理解を深めるほど基本的なタネに新しい可能性を見出して発展させられるはず”というのが今回のポイントではあるのは間違いありません。

どれも見知った原理で、恐らく新規性が有るのはブラインドフォールという現象だけですが、これも似たような原理を日本のマジシャンが発表しているので知っている人は知っています(少し話題になりましたしね)。

この第3巻が素晴らしいのは、原理よりもジャーメイの考え方と、最後にあるマイケル・ウェーバーとの対談です。対談も結局はジャーメイの考え方についての話なので、正にジャーメイズマインドですね(二回目)。

マジシャンに対する批判と言うよりは、何も考えていないマジシャンに対する風刺が多い印象でした。(批判もあれば、指摘もあります)

特にメンタルマジックと呼ばれる系統とメンタリズムに明確に違いを作っているという感じです。

メンタルマジックとメンタリズム

そういえば、ケン・ウエバーのマキシマム・エンターテインメントでもメンタルマジックをかなり批判していましたし、マジシャンの思うメンタリズムはただのメンタルマジックであって、その中でもとりわけ糞ネタが多いという話しがありました。(注:ここまで言っていませんが、ニュアンス的にはそう受け取ってもおかしくないです)

特に印象的だったのは、、マイケル・ウェーバーのセリフで

"ネットがマジックやメンタリズムをだめにしたか?"そうは思わないが大きな変化があったとは思う。情報は段違いに入手しやすくなった。

マジックを始めて数年の子たちの知識は凄い。テクニックのレベルも高い、パームも素晴らしいし、ギルブレス・プリンシプルも理解している。上質な情報を得て応用もできている。

しかし、その結果はどうか。何も作ったことのないスーパー・テクニシャンが増えただけ。知識やテクニックのレベルは飛躍的に上がったが、その上昇率と比べて良いパフォーマーはずっと少ない。"

 

"マジシャンはだいぶ前から「魔法の力がある」とは思われなくなってしまった。現象を起こす技術はあるが、本当に壊れたものを直したりは出来ない。特にビザー・マジックは本来の形で機能していない。

しかし、疑い深い観客が「トリックとは思うが本当に超能力じゃないの?」ということもある。私がメンタリズムで気に入ってるところは、観客はそんな力があればいいと思っている。観客は「もしかしたら」と思う余地を残したがる。これはマジシャンでは不可能。

マジシャンは賢いタネを使って観客の意識の裏を利用して騙すもの、そう思われている。「見事なテクニックでカードを当てた」「でもタネは分からない」ただそれだけだ。だが読心術やメンタリズムでは、観客の中に「もしかしたら」という気持ちの入る余地を残す。"

かなり刺激的で、特に後半は自分でもかなり思う所がありました。

それともう1つはルーク・ジャーメイの言っていた

マジシャンは、みなが「自分の事を凄いと思っている」と思ってる

例えば医者の一団に演技をしたとする、ガンを治療する人もいればボランティアで難民に家を建てる人もいる。そんな人はカードの混ぜ方などを気にしない。

マジシャンは彼らより優れてなんていない。「さぁ凄いことを見せよう」だなんて傲慢でしか無く馬鹿馬鹿しいだけだ。

彼らがその気になれば「上手いね、でもこっちは命を救っている」と一気に切り捨てられる。

立ち直りようがない。マジシャンは「そうですか、それではこのカードを…」と言うだけで、何も言い返せないだろう。

これも以前に書いた、マジシャンに肩書や資格は必要なのかというものや、変に肩書を載せすぎても逆効果になるという話と似ています。というか私が影響をウケていますね(゚∀゚)

最近もアウトのファローシャッフルを8回して、元のオーダーに戻す時間を測り、ファローシャッフル1回あたり約10秒だったわけですが、「10秒あったらウサイン・ボルトは100メートル走りきるんだよなぁ…」という思いがありました。

知人にそのことを話したら「その考えにたどり着くのがやばいわw」と言われましたが…\(^o^)/

繰り返しになりますが、第3巻はどちらかと言うと思想よりの内容です。もちろん紹介されている現象はどれも素晴らしものですし、原理もかなり簡単で、聞いたら「何故分からなかった」と思うようなものです。

ジャーメイがタネを知った人がくやしがる顔を見るのが好きみたいなことを言っていましたが、その気持はわかりますヽ(=´▽`=)ノ

AUTOMATIC EFFECTSへの影響

私が最近だしたAUTOMATIC EFFECTSに収録されているR4というカード当ても、タネを知った人は非常に悔しそうにしますし、それがある種の快感になってるのは否定できない感情です。超古典の応用ですし、誰もが一度は使ったことの有る原理だと思います。ちなみに、AUTOMATIC EFFECTSのレビューを、News: MAGIC MOREでしてもらっていますので、まだ読んでない方は是非御覧ください。

もっと批判的な事を書かれるかと戦々恐々としていましたが、予想以上に評価されていて驚きました(゚∀゚)

結局、この作品を作るに当たっても、このジャーメイズ・マインドの影響がかなり強かったと見直して改めて思いました。

※AUTOMATIC EFFECTSは販売を終了しました

おわりに

ジャーメイズ・マインド第3巻の内容に関する補足ですが、第3巻を見る前に第1巻を見ておくことをオススメします。

第1巻でやっていたQ&Aのポイントや、コネクテドについての話がされています。対談の中で第2巻のプロットについても少し触れられていますが、第1巻の内容ほど出てきません。

最後にレクチャー中のジャーメイのセリフを1つ…

「トリック部分だけを見たい人はいるか?」