マジシャン同士の会話でよく出てくる「一般受け」についての考察です。

個人的にはこの考え方はナンセンスだと思っているので、今回はただの問題提起のようなものです(多分)

一般受けするマジック?

そもそも一般って何?誰?

一般受けについて話しているのを見て、いつも思うのがこれです。

まず、一般が定義されていません…

「一般」についての共通認識が無い以上、その会話は不毛だと思うのですが、きっと彼らは本気で一般受けについて語っているのではなく、単に話のネタとして出しているに過ぎないのだと思います。

マジシャンから見た一般人とは、非マジシャンのことです。つまり、マジシャンの言う「一般受け」は恐らく、非マジシャンに受けるということになります。

しかし、この非マジシャンもまた、かなり範囲が広いと思いませんか? 老若男女、マジックを見るのが好きな人、嫌いな人…etc

バーでマジックをしている人からすれば、マジックバーに来る非マジシャンかも知れませんし、普段老人ホームで見せる機会が多い人であれば、高齢者がその人にとっての一般です。キッズショーが多いのであればキッズですね。

もちろん、マジシャン相手にしか見せる機会がない人にとっては、マジシャンこそが「一般」に含まれるはずです。

何故か存在する一般人像

ところが、一般受けについて話しているのを聞く限り、どうもマジシャンたちの間で同じ様な一般人像も同時にある様な気がしています。自分が普段見せている環境にいる非マジシャンの観客とは別に、想像上の一般人像と言いますか…「エアプで語ってるんじゃね?」みたいに思うときがあるわけです。

若く社交的でマジックを見るのが好き、途中で邪魔をせず素直に心から驚いてくれる人…或いは、簡単に騙されてくれる人、リアクションのいい人等…こういうタイプの人に受けるマジックを、「一般受けする」と呼んでいるのでは?と思うことも少なくありません。

それは「一般」ではなく「理想の観客」です。

みんながみんな同じ一般人像をイメージしているため、それはそれで話が通じることもありますが、正直な所ちょっと不毛ですね。

受ける/受けないの振れ幅

同じマジックを演じているのに、一方からは「すごく受けた」もう一方からは「あまり受けなかった」と聞くことがあります。

これはそのマジシャンの技量もありますが、単に客層とあっていないだとけとも言えます。

客層に合うルーティンを使う、合わせてアレンジするのは普通のことのはずですが、どうもみんながみんな別々のお客さんに同じマジックを見せたがる傾向があるように感じます。

大衆受け

一般受けについてはちょっと分かりませんが、大衆受けについては分かります。ほとんど言葉遊びですがね!

世の中の広告やTV番組の殆どは大衆受けを狙っていると言えます(実際にはコアターゲットを決めてそこに属する人にウケるように作られているわけですが、その話をすると長いので省略します)。

大衆受けする原則は以下のルールが適用されると考えられます。

  1. 考える必要の無いシンプルな現象
  2. 複数の現象が同時に起きないもの
  3. 途中から見始めても分かるもの

要は出現&消失現象だったり、サイレントアクトだったり、ステージ全般が大衆受けがしやすいと言えます。

TV番組は「中学校2年生にも理解できるように作れ」と言われていますし、書籍や記事も「馬鹿にも分かるように書け」なんてディレクションがかかることがあります(年齢については結構振れ幅があり、小学校3年生にも分かるようにって考え方もあるっぽいですね?何れにせよ理解力の乏しい人、集中力を持続させるのが難しい人にも分かるようにってことかと…)

ただ、この小学校3年生〜中学校2年生にも理解できて楽しめる現象ってのが、正に大衆受けする要素だと私は考えています。

複雑な計算が必要だったりや心の葛藤を表現するもの、謎のストーリー仕立てのものよりも、もっと直感的で見た目にも分かりやすい現象ってのが受けやすいと予想されます。そして、それは動画ばえするものですし、マジシャン非マジシャン問わず若い層にはそういったビジュアルでスライトフルな現象がウケている現状を鑑みるに、この考えはあながち的外れではないとも思っています。

結論?

一般受けは、一般の定義に依存するため、それぞれ違った意見が出るのはおかしくない。
一般受けを「大衆受け」と考えた場合、ある程度共通するポイントが見えてくる。

この辺が落とし所ですかね?(割と適当)

まぁ、大衆受けってのは最大多数を狙っているものであって、演者の環境的によっては観客の殆どが大衆に属さない場合も多々あると思います。特にマジックバーにくるお客さんや、自分から好き好んでマジックショーを見に来るような人が大衆に含まれるかは微妙なところなので…

一般を大衆として考えた場合と、経験から言う「一般(その人がよく遭遇する観客)」ってのは違うものですし、上の方でちょっと触れた理想的な客ってのも大衆とは少し違います。

個人的な意見としては、演者側が言う「これは一般受けする」って現象はその人の環境に依存する部分がかなりあるので、話半分程度に聞くくらいで良いと思います。ストリートマジックに関しても、大衆受けの要素が強いので参考になるかもしれませんが、箱でやる場合の客層とはまた違うので、やはり話半分くらいになりますね!

身内ネタをステージでやっても白けますし、ステージのガチネタを身内の集まりでやっても場合によっては引かれます。

結局はTPOに合わせるしか無いわけです!という当たり前の結論でした(^ρ^)

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おまけ:自分の環境について (会員限定)

ここまで書いたことですし、ついでなので私が普段見せている層についての話も…

私も見せる相手はかなり偏りが存在していて、環境的に似たようなスペックの人たちが集まることが多いので、個人差が大きすぎない集団を相手に見せることが多く、そこはかなり助かっています。

  • 集団1:20代前後、学生、女性多め、マジックはあまり見たことがないし、自分でも全くやらない。
  • 集団2:10代後半〜40代半ば、専門職、男性多め、マジック好きな人が1人程度で、他は生で見たことがない人が多い。
  • 集団3:30代前半〜後半、専門職、男性多め、マジックはほんの少しやったことがある程度で全く詳しくない人が多数。
  • 集団4:10代後半〜30前後、学生或いは専門職、男女比不定、非マジシャン、高学歴(医師など)。
  • 集団5:40代〜、企業経営者或いは役員とその家族、男女比1:1、非マジシャン。
  • 集団6:マジシャン、或いはマジックが好きな人

こうやって見るとわかるように、非マジシャンで専門的な職業の人を相手にすることが多いです。40歳以下の専門職で、ジャンル問わず高い技術か優れた頭脳を持つ人が私にとっての「一般」ということになります。

ここは会員専用のコンテンツなので、もう少し具体的に言うと…
集団2と3はプロの音楽家、声優、お笑い芸人などの集まりで、今の所このメンバーに見せることが最も多いです。

集団5は知人が経営してい店でのイベントで、そこはある社長クラブのようなものの会員が多く、参加者の1/3は企業経営者かその親族で、中には某出版社の経営者一族の方もいたりします。また、他の参加者も某メガバンクの役員だったり、所謂ハイソな人が多く参加する場所で演じる機会を定期的に頂いています。

この人達の場合、大衆向けの現象も受けますが、それよりも少し複雑にしたほうがより響いたりすることもあります。特にプロの役者やミュージシャンの場合は、癖が強かったり、技術(≠スライト)の高さを強く前に出したほうが受けやすい傾向があります。また、過去にマジシャンを生で見たことがある人がそこそこいるので、一般的によく見かける営業ネタは全てやらない方が良いです。

また、特に頭の良い人を相手にする時は、認知能力に余裕があるので現象のテンポを速くしたり、タネの手がかりがない現象については終わってから考察する時間を与えてあげると、いい具合に勝手に盛り上がってくれます(ぉぃ)。

注意点としては、不可能性が高すぎる現象は頭のいい人にやると原理を逆算されるので、フェイクを幾つか入れるか、敢えて不可能性を下げた方がいい場合が多いです。

カードマジックに関してはカットは混ざったような感じがしないのが普通の認識ですし、適当な(心理学的な)理屈を語っても白けるだけなので、そういった演出が必要な場合はかなりのリアリティをもたせる必要があったりします。それか相手の知らなそうなトリビアを交えた冗談を話したりとか。(クラブをクローバーだっと思っている人が案外多いので、植物のクローバではなく棍棒を意味するクラブって話をするのもおすすめです)

また、特定の分野でかなりの成功を収めている人たちは、孤独感や奇異の目で見られること対する話をすると受けが良かったりします。また、平凡的な人を相手にする時はその平凡さからくる葛藤のような話をするのもありです(この辺はプレゼンテーションの基本ですね)。

結論は上と同じで、環境と相手に合わせて適切な手段を選ぶしか無いと思います。

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