マジシャンの服装についてのお話。

マジシャンの服装はダサい人が多いと思いませんか?特に日本人でプロフェッショナルではない人にその傾向があるように私は感じています(自称プロフェッショナルの人でもダサい人が結構な割合で…ry)

ということで、ダサいと思われるであろう理由を幾つか書いていきます。

服装がダサくなる理由

サイズ感のあっていない服装

これは理由としては非常に分かりやすいです。

恐らく次の2つの理由だと考えています。…

1.既製品でジャストサイズが存在しなかった。

この理由は非常によく分かります。

私の場合だと、体型が日本人離れしていることもあり、ユ○クロでサイズの合うジャケットがほぼ買えません。ちゃんとした物を買おうと思うと4万円前後の出費になります。

流石に4万円は高いとは思いましたが、当時は価格を特に見ずにデザインが好みだという理由で選んだので後悔はありません。

2万円前後くらいからしっかりした作りの物は存在しますし、もちろんユニ○ロでジャストなサイズがあればそれで十分だと思っています。

プロではないのだからとりあえずあれば良いや、なんて理由で安いジャケットを買うのは理由としてはわかりやすいです。

サイズの合ってないジャケットを着るくらいなら、ジャケットスタイルを放棄したほうが良いかと思いますがね!

2.大きい方がマジックがしやすい。

大きめのジャケットはマジックがやりやすい。

死角は多いしポケットに多少ものを詰め込んだところで目立たないし、それに袖口も広いのでスリービングもやりやすい。膨らみが分かりにくいので内側の仕掛けがバレにくいというメリットもあります。

しかしですよ!演者的には良いと思っても観客的にはどうなのでしょうか?

路上やレストラン、店舗内にたまにマジシャンがいることがありますが、周りから「あの人なんかジャケット大きくない?」などの声をちょいちょい聞いたことがありますし、「マジシャンってなんでサイズの合ってない服を来てる人が多いの?」という質問を寄せられたことも1度や2度ではありません。

せっかくスタイリッシュ(?)なマジックをしたところで、演者自身にダサいという印象がついてしまったら台無しではないでしょうか?

ちょいダサがマジシャンの良いところかも知れませんが、個人的には歓迎し難い印象です。

何も考えていないような黒一色コーデ

黒は神秘的なイメージがありますし、マジックをしそうな雰囲気も出せるから積極的に取り入れても良いと思ってはいます。現にダレン・ブラウン等は黒一色コーデでステージに上がることもあります。

しかし!ここで注意して欲しいのは単色コーデは難易度が高いということです。

はっきり言って黒いジャケットに黒いパンツ、黒いシャツはかなり難しいです。せめてシャツだけでも白にしたほうがよっぽど楽にスッキリ見せることが出来るにも関わらず、頭から爪先まで黒一色で野暮ったい人がなんと多いことか…

単色コーデをする時の注意は立体感が無くなるということで、同じ黒でもトーンが違うものを組み合わせたり、もしくは最初からかなり綺麗なラインが出る服を選ぶべきです(そしてラインが綺麗な服は高い傾向が…)

黒い服は生地によっては非常に安っぽく見えますし、綺麗に見えないこともあります。サイズ感や生地を改善しようとすると費用がかなりかかってしまうので、単色ファッションに強いこだわりが無い限りは避けたほうが無難だと私は考えています。

ダレン・ブラウンは黒一色でも上手く着こなしています、よく見て下さい…

よく見るとトーンが違う黒を合わせてるのが分かりますし、やや立体感のある(うっすらと模様が入っている)生地の服が多くはないでしょうか?つまりはそういうことです。

過剰な装飾

ボタンダウンと似たような理由でスーツにチェーンを無駄に合わせる、フラワーホールにバッジやアクセサリーを付けるというのも、やはり違和感があります。(ベストについてるチェーンはそこまで気になりません。アルバートチェーンとか結構良いんじゃないかなと思っています)

観客がそういうことに対して無頓着であれば問題ないかもしれないが、見る人によっては常識の無いバカだとだと思われるリスクがあります。

特にメンタリストのような心理学云々を語りたがるような演出をする人は注意が必要で、観客に内心バカにされている状態で幾ら薀蓄を語ったところで、何も伝わらない可能性があります。(私の意見としてはメンタリストが心理学について語るのは、素人が民間療法をする時に「医学的に見て〜」というレベルで違和感が…ry)

もし上質な顧客を付けたいのであれば、最低限の常識を踏まえた服装をした方が良いかと思います。

人は見た目によらないと言いますが、服装は顔の造形とは関係なく自力でなんとかなるものですし、そこでマイナスを喰らわないようにするだけでどれだけ有利に事を運べるかを考えて欲しいところです。

おまけ:燕尾服とマジシャン

最後に燕尾服について少しだけ。

これも私の独断と偏見ですが…マジシャンで衣装を燕尾服にしている人は何か理由があるのでしょうか?

例えば海外のマジシャン、スティーブ・コーエンは燕尾服に金縁の眼鏡というスタイルなのは「億万長者のマジシャン」(だっけな?)という肩書があるから分かります。お国柄、燕尾服はハイソなイメージがあるしフォーマルな場だと未だに着る人がいます。

しかし、日本では?

そもそも、マジシャンで燕尾服(夜会服)を着始めたのは近代奇術の父と呼ばれるロベール・ウーダンと言われています。

彼は当時のマジックに含まれていた黒魔術的な要素を排除するべく、怪しい衣装から普通の夜会服に変え、照明も明るい状態でマジックをする現代のような演技スタイルを作りました。またそのことから近代奇術の父と呼ばれています。

燕尾服を着た理由は非常に簡単で、当時の夜会ではその服装が普通だったから。

ここでの教訓は服装を選ぶ際はTPOへの配慮か、或いは必要性に応じた選択が必要だということです。燕尾服や奇抜な服装が悪いので無くて、特に理由なくそれを無く選ぶのが悪いのです。

服装はその場に合わせたもので上質な物を選ぶのが良いとマキシマム・エンターテインメントという本に書かれていますし、それは間違いではないと私も思っています。

スーツの人が多いのであればスーツを着れば良いし、カジュアルな人が多いのであればスーツを着る場合でも少しカジュアルに寄せるという工夫が出来るはずです。

もちろん、キャラクター的に燕尾服等が絶対必要なのであればそれを選択するのも悪くありません。何となく選ぶのが問題で、こだわった結果の選択であれば問題になりません。

ピフ・ザ・マジックドラゴンというマジシャンはフザけた緑のドラゴンをモチーフにしたキグルミのような衣装を着ていますが、そのキャラクターを作るために彼は非常に徹底しているのはご存知でしょうか?

聞いた話ではキグルミを脱いでいる状態の彼を見たことが無いと言われているくらいだそうです。それくらいの強いこだわりがあるのであれば誰もが納得できますし、そこに価値を見出すことが出来るはずです。もしそうではないのならTPOに応じた服を着るべきだと進言しておきます。

ケン・ウエバー (著), 滝沢敦 (編集), 田代茂 (翻訳)

おまけ2:不適切なボタンダウンシャツ

スーツを着るならボタンダウンシャツは着ないほうが良いです。ボタンダウンシャツは成り立ち的に運動着の一種なので、本来はスーツに合わせるべきではありません。

日本では何故かスーツにボタンダウンシャツという組み合わせを推すことがありますが、私には全く理解できません。アメリカでもスーツにボタンダウンシャツを組み合わせるのをよく見るため、恐らくその影響によるものだと思いますが…
※筆者は英国かぶれです

個人的なイメージですが、スーツにボタンダウンシャツを着て更にネクタイを締めるというのは、上下スーツでシャツだけ体操着にネクタイを巻いているのとほぼ同義です。

実際に体操着にネクタイを締めて上下をスーツで合わせている図をイメージして下さい。ちょっと笑えてきそうな気がしませんか?

カジュアルに着る場合には全く問題ないので、フォーマル以外の環境であれば、好みや見た目を重視した結果選ぶのは全然アリだと思います。