催眠用語集〜基礎編〜
6年くらい前から催眠用語集みたいなのが欲しい、という意見があったのでチマチマ更新していきます。
※ 毎度のことながら定義された語彙以外は割と適当です
目次
定義のある催眠用語
APAで定義されている催眠周りの用語は以下のとおりである:
- 催眠
- 催眠誘導
- 催眠感受性(被催眠性)
- 催眠療法
催眠 | Hypnosis
暗示に対する反応性の強化を特徴とする、集中的な注意と周辺意識の低下を伴う意識の状態。
催眠誘導 | Hypnotic induction
催眠を引き起こすために設計された手順。
催眠感受性 | Hypnotisability
催眠時に暗示によって起こる生理的或いは感覚、感情、思考、行動の変化を経験する個人の能力。
心理学用語である被暗示性(Suggestibility)とは区別され、被暗示性と催眠感受性の高さはある程度の相関はあるものの、全く同じとは言えないため、特に2014年以降で催眠の掛かりやすさを被暗示性と呼ぶのはあまり正しくはない。
ただ、催眠感受性は実測値であり事前に分かることがないため、事前に催眠の掛かりやすさを推測する場合、被暗示性を用いることもある。
催眠療法 | Hypnotherapy
医学的或いは心理学的な障害、問題の治療における催眠の利用。
日本では医師や医師の指示があった者以外が治療目的に催眠を行うと医師法に抵触すること、また、最近の研究でも効果が限定的で、他により有効な治療法があることから催眠療法に出会うケースは非常に稀だと言える。
催眠(HYPNOSIS)と催眠術(HYPNOTISM)
最新の定義では「催眠術」に該当するものは存在しないため、2026年現在において催眠術 (Hypnotism) と言った時はそれっぽい芸やトリックも含む。
これは筆者個人の考えではなく、英語圏で "Hypnotism" (催眠術) と言った時はステージ催眠(トリック含む)を指すか、催眠における手法を特に強調する場合に使われ、学術的な "Hypnosis" (催眠) と区別されることによる。
なお、1つ前の定義にあった "Hypnotic Procedure" の概念を催眠術と訳すことができなくはないので、一応その時の定義を簡単に書くと…
「お互いが催眠と認識した状態で起こる体験(現象)が催眠であり、催眠術はその反応を促し評価する手段」となる
これはかなりの意訳なので、気になる方は2003年頃の定義を是非調べてほしい、きっとその長さに驚くだろう…(学術的な事実ベースで催眠の現状を比較的正確に捉えられてはいるものの、一般層のクライアントに分かりにくいため、現在の定義ではシンプルなものになった、という経緯があったり)
メスメリズム
フランツ・アントン・メスメルが提唱した「動物磁気」によって現象を起こす手法。後に非科学的と動物磁気は否定されたが、催眠が生まれるきっかけになった。
名付け親は「催眠(HYPNOSIS)」と同じジェイムズ・ブレイド医師。
頻出用語
催眠界隈で比較的よくみられる用語
ラポール
元々はメスメリズムで使われていた概念で、動物磁気によって様々な現象が起こる状態を指す。
本来は催眠誘導(≒メスメリズム)の結果として生じるもので、先に構築するものではないのだが……療法分野では本来の意味から転じて、医師と患者の親密さや、信頼関係が構築された状態を指すため、漠然とラポールと聞くとこのイメージを持つ人が多い。
暗示(Suggestion)
催眠の主要な部分と考えられることもあり、これによって現象が起こるとも言われている。
"Suggestion" の第一義は「提案」であり、催眠誘導がそんなに「暗に示す」わけでもないのはこのため。最初に「暗示」と翻訳した人が悪い…
なお、心理学用語としての「暗示」と区別するのに「催眠暗示」と呼び分けることもあるが、単に「暗示」と呼ばれることの方が多い。
スクリプト(Scripts)
催眠誘導で使うセリフのこと。
催眠誘導の成否の大部分がスクリプトに掛かっている、と言っても過言ではなく、適切なスクリプトであれば棒読みでも録音音声でも7〜8割の人に何らかの催眠現象が起こることが実験室環境で結果として出ている。
トランス(Trance)
特に定義された状態があるわけでもなく、2025年4月までの研究でトランス状態特有の客観的指標は見つかっていないため、各人が思うトランス状態にかなり揺れがある。
催眠の文脈におけるトランスは恐らく「催眠性トランス」のことだが、単に「トランス」と呼ばれることが多く、意味の混同も見られる。
催眠界隈でトランスと言った場合、その現象は多岐に渡るが共通するポイントは以下の通りである:
- 注意が狭まる
- 意識レベルの低下
- 脱力感
特に最初の2つは現在の催眠の定義である「集中的な注意と周辺意識の低下を伴う意識の状態」に該当するため、催眠状態によるリラックスや意識の変化全般がトランスと呼ばれていると推測できる。
催眠現象が起こる前段階と見ることもできるが、界隈ではトランス状態そのものを好む人も多く一定の需要がある。
変性意識状態(Altered State of Consciousness, ACS)
催眠現象を引き起こす要因とされていた状態で、トランスも変性意識状態の1つとされる。
2002~2006年の研究により、変性意識状態が催眠現象を引き起こすとされる「変性意識説」は『動物磁気と同程度に非科学的』とかなり強い言葉で否定されている。同様の理由でトランスが催眠の本質である、という考え方も間接的に否定された。
現代催眠
エリクソン催眠が現代催眠と紹介されることが多いが、学術的にそのような区分は存在しない。
エリクソン派が「我々の催眠は既存の手法とは違うぜ!」というプロパガンダとして生まれた説が割と濃厚で、何よりエリクソン本人が過去のインタビューで自身の催眠を古典の延長と表現していたことからも、エリクソンの信奉者が勝手にそう呼んでいたと推測される。
(エリクソン自身が最初にレポートを出したのが1920年代、流行が1950年前後と考えても現代と呼ぶのに無理がある)
仮に学術ベースで古典催眠と現代催眠を分けるのであれば、上述の変性意識説が否定された2006年前後を境にする方が妥当で、つまり、変性意識状態(≒トランス状態)を必須と考えるのが古典催眠、必須としないのが現代催眠とした方がより理論に整合的である
(結果的に日常会話的な手法をも含むため、現代催眠=会話形式、みたいなイメージも完全な間違いではない)
推薦図書
基礎に関しては以下の2冊を読むとほぼ足りる
より詳しく知りたい方は以下の記事を参照されたし。




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